万葉集

万葉集とは、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存するわが国最古の歌集である。
全20巻からなり、約4500首の歌が収められている。 作者層は天皇から農民まで幅広い階層に及び、詠み込まれた土地も東北から九州に至る日本各地に及んでいる。

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柿本人麻呂の代表作:
・天離(あまざか)る 夷(ひな)の長道(ながぢ)ゆ 恋ひ来れば 明石の門(と)より 大和島見ゆ
 天路遠い夷の長い道を恋ながら来ると明石の海峡から大和の陸地が見えるよ。 (『万葉集』巻3-255)

・東(ひむがし)の 野にかきろひの 立つ見えて かへり見すれば 月西渡(かたぶ)きぬ
 東の空は、曙の太陽の光が差してくるのが見え、振り返って西を見ると、月が西の空に沈んでいこうとしている。(つまり、月が沈むかのように父である草壁皇子はお隠れになったが、そのあとを継ぐ軽皇子が太陽となってこの世を照らそうとしているのである。) (『万葉集』巻1-48)

・ま草刈る 荒野にはあれど 黄葉(もみぢば)の 過ぎにし君が 形見とぞ来し
 阿騎の野は草を刈るしかない荒野だけれど、黄葉のように去っていった君の形見としてまたやって来たんだよ。 (『万葉集』巻1-47)

・淡海(あふみ)の海(み) 夕波千鳥 汝(な)が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ
 淡海の海の夕波の上を飛ぶ千鳥が鳴けば心もしなえるように昔のことが思い出されるなあ。 (『万葉集』巻3-266)

・ささなみの 志賀の辛崎(からさき) 幸(さき)くあれど 大宮人の 船待ちかねつ
 楽浪の志賀の辛崎はその名の通りに今もあるのに大宮人を乗せた船はいくら待っても帰ってこないなあ。 (『万葉集』巻1-30、通称「近江荒都歌」)

・石見のや 高角山の 木の間より わが振る袖を 妹見つらむか
 石見の高角山の木々のあたりから私が振っている袖を妻は見ているだろうか (『万葉集』巻1-132、通称「石見相聞歌」)

・鴨山の 岩根しまける 吾をかも 知らにと妹が まちつつあらむ
 鴨山の岩を枕として死のうとしている私を何も知らずに妻は待ち続けているのだろう。 (『万葉集』巻2-223、石見國に在りて臨死(みまか)らむとせし時、自ら傷みて作れる歌)